2024.04.30
米インベナジーCEO「北海道で50万KWの再エネ開発へ」

再生可能エネルギー事業を手がける米インベナジーのマイケル・ポルスキーCEOは日本経済新聞の取材に応じ「今後10年間で北海道での再生可能エネルギー関連開発に2000億円以上を投資する」と語った。インベナジー社は3月、同社として国内初の陸上風力設備を北海道留寿都村で稼働したばかり。脱炭素の動きが加速する中、切り札の一つとなる風力発電事業の拡充を検討する。
インベナジーは米国を中心に世界各国で再生エネ発電の開発を進めている。発電能力は累計約3200万キロワット。蓄電事業や天然ガス発電、浄水プロジェクトなども手掛ける。国内では同社の日本法人が留寿都村で発電能力約6万3000キロワットの陸上風力発電を稼働させたほか、長野県で太陽光発電プロジェクトなどを展開してきた。
ポルスキー氏はインタビューで北海道を「戦略的に最重要な地域」と強調。「今後 10 年間で道内で約 50万キロワット級の再生エネを導入したい。将来的には2桁の事業数を道内で成就させたい」と明かした。50万キロワットは火力発電所1基分に相当する。

まず、洋上風力発電や蓄電事業を展開する考えで、「再生エネが安価になれば(再生エネ由来の水素)『グリーン水素』の生産も検討する」という。
北海道は風況に恵まれているとされ、洋上風力の導入が期待される。道内では現在5区域が着床式洋上風力の「有望な区域」に、浮体式洋上風力の整備に向けた「準備区域」が2区域存在する。風力発電をはじめとする再生エネの普及に伴い、今後、風力発電の余剰電力でグリーン水素を製造することも可能になるとみられ、水素も安価でクリーンに作れる可能性がある。
再生エネ導入を巡っては、自治体や企業の動きも活発になりつつある。北海道や札幌市は2023年に道内にグリーントランスフォーメーション(GX)投資を集めるため、3メガバンクや省庁、地元企業などと共同事業体「チーム札幌・北海道」を立ち上げ、特区選定を目指している。国内外からの投資や企業集積を実現するために国へ洋上風力や水素の規制緩和策、税制優遇などを要望している。
ポルスキー氏は「アジアの中でも日本は再生エネ目標が明確」とした上で「チーム札幌・北海道が取り組む洋上風力発電の規制緩和メニューなどは非常に魅力的だ」と評価した。インベナジーでは風力発電プロジェクトの規模を拡大できれば、道内に建設や保守点検を担う人材の育成拠点を設置する案も検討するという。同社は米国で独自のトレーニングセンターを持ち、これまで研修を受けた人数は1000人を超えている。
事業拡大を視野に入れる一方、ポルスキー氏は開発から運転開始までの期間について懸念を表明。留寿都での陸上風力発電事業では、開発から運転開始までに10年を要した。「開発期間が投資判断の大きな要素になる。他国と比べて長くなれば日本ではない国をメインに投資を強める可能性もある」と述べた。
外資を含めた企業誘致について、エネルギー政策に詳しい国際大学の橘川武郎学長は「再生エネや水素を使いたい企業やデータセンター関連企業の石狩、苫小牧地域への進出意欲が高まっている。外資を含む企業誘致に向けて、道や市など自治体同士の政策連携がうまく進められるかが重要だ」と指摘する。